社会福祉法人 札幌緑花会

札幌地区 緑ヶ丘療育園

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緑ヶ丘療育園 ー お知らせ

てんかんミニ知識 第2回(あなたは人差し指と薬指のどちらが長いですか?)を掲載しました。

2015-03-03

 男性では人差し指より薬指の方が長い人が多いようです。男性は胎児期に男性ホルモンのアンドロゲンに暴露され、手指の骨に存在するアンドロゲン受容体活性が高いことと羊水中のテストステロンの影響により人差し指より薬指の方が長くなると考えられています。ちなみに、私は男性ですので人差し指より薬指の方が長いです。一方、女性では逆に人差し指の方が薬指より長くなるといわれています。もちろん、みんながそうだということではなく、一般的にそのような傾向があるということです。

 ところで、多嚢胞性卵巣症候群という病気があります。成人女性の5~10%にみられる病気で、月経不順、無月経、不妊症、流産などの症状がみられます。また多嚢胞性卵巣症候群では男性ホルモンのアンドロゲンが過剰のために多毛、低音声などの男性化徴候がみられることもあります。先ほどの人差し指と薬指の長さについても多嚢胞性卵巣症候群の女性では男性化により薬指の方が人差し指より長くなる傾向にあるとの報告もあります。さらに多嚢胞性卵巣症候群ではインスリン抵抗性が認められ、肥満傾向、糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化などのメタボリック症候群のリスクが高くなり、子宮内膜癌(子宮体癌)のリスクもあるといわれています。

 多嚢胞性卵巣症候群の原因は明らかではなく、遺伝的要素と環境的要素の両者が関与しているといわれていますが、てんかんの女性に多く(13-25%)、とくに抗てんかん薬のバルプロ酸(商品名:デパケン、セレニカRなど)を服用中のてんかん女性に多い(30-64%)ことが報告されています。

 多嚢胞性卵巣症候群では、卵巣の超音波検査あるいはMRI検査を行うと少なくとも一方の卵巣内に2-9mmの小卵胞が10個以上存在する所見がみられます。さらにホルモン検査で血中の男性ホルモンが高値になります。

 したがって、バルプロ酸(商品名:デパケン、セレニカRなど)を服用しているてんかん女性が初潮発来後に無月経など月経異常がみられるようになった場合には多嚢胞性卵巣症候群の可能性がありますので、主治医に相談するようにしてください。

                          てんかん外来 皆川 公夫

2階に多目的トイレを設置しました。

2015-02-09

 車イス使用者用のトイレが3階にしかありませんでしたが、外来患者様等からのご要望もあり、2階にも車イス使用者用の多目的トイレを2月7日に設置完了しました。

トイレ内部

トイレ外から

トイレ手洗い部

てんかんミニ知識 第1回(抗ヒスタミン薬でけいれんがおこりやすくなる)を掲載しました。

2015-01-20

 抗ヒスタミン薬は、じんましん、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、感冒などに用いられますので、皆さんも抗ヒスタミン薬を服用する機会が多いと思います。

 かぜ薬や花粉症の薬を飲んだとき眠くなりませんでしたか? 抗ヒスタミン薬を服用すると、薬は全身を回って、脳の中にも入ってきます。抗ヒスタミン薬が脳内に入ると、眠くなる、けいれん閾値が低下する(けいれんがおこりやすくなる)という変化がおこってきます。そのため、てんかん患者さんが抗ヒスタミン薬を服用すると、普段よりも発作がおこりやすくなる危険性があります。とくに、こどもは大人よりもけいれん閾値が低いことが知られていますので、こどもが抗ヒスタミン薬を飲むと、もともと低いけいれん閾値がさらに低くなり、きわめてけいれんがおこりやすい状態になってしまいます。

 したがって、こどもの場合には、てんかんや熱性けいれんの既往がなくても、抗ヒスタミン薬でけいれんがおこる可能性があるため、こどもへの抗ヒスタミン薬の服用は控えた方がよいと思います。私はこどものかぜ薬には抗ヒスタミン薬を入れないようにしていますが、市販の総合感冒薬には抗ヒスタミン薬が含まれていることが多いので、市販の総合感冒薬は使用しない方が安全です。

 代表的な抗ヒスタミン薬として昔から使われていた「ケトチフェン:商品名ザジデン」という薬を例にあげてみます。この薬の添付文書には、てんかんまたはその既往歴のある患者にはけいれん閾値を低下させることがあるので禁忌(投与しないこと)と記載されていますし、使用上の注意にも、てんかんを除くけいれん性疾患、またはこれらの既往歴のある患者にはけいれん閾値を低下させることがあるので慎重に投与することと記載されています。

 しかし、花粉症などでは症状を抑えないと生活に大きな支障が出ることがあります。このような場合には脳に入りにくい(眠くならない、けいれん閾値を低下させない)新しいタイプの抗ヒスタミン薬がありますので、その薬剤を選んで使用するようにします。

 患者さん自身が抗ヒスタミン薬の服用について迷ったときには主治医によく相談してください。

てんかん外来 皆川 公夫