緑ヶ丘療育園 ー お知らせ
てんかんミニ知識 第6回(ドラベ症候群)を掲載しました。
ドラベ(Dravet)症候群とは、1978年フランスの女医Dr. Charlotte Dravetにより提唱されたてんかん症候群で、乳児重症ミオクロニーてんかんともいいます。
乳児期に発熱により誘発され、特徴的なてんかん発作が生後1年以内の正常な乳児に発症し、1歳以降にはさらに様々な発作も付随して起きることが特徴です。日本人では入浴による体温上昇が発作の誘因となりやすいことも知られています。
発症当初は熱性けいれんとの鑑別が難しい場合もありますが、本症候群では頻回のけいれん発作を反復し、しばしばけいれん重積状態を起こして緊急入院や集中治療管理を必要とします。最近、本症候群ではSCN1A遺伝子の変異がみられることが多いことがわかってきています。
生後1年間は脳が急速に発達する時期ですが、この頻回のけいれん発作やけいれん重積によって脳が障害を受け、正常な乳児においても急速な精神運動発達の遅れが生じるとされています。1歳過ぎから遅れ始めますが、4歳以降になると遅れは鈍化するといわれています。また、2歳以降に運動失調、筋緊張低下、多動、錐体外路症状も出現します。
長期予後は不良であり、経過中の致死率は16~19%で、突然死が最も多く、次いで急性脳症、溺死となっています。また、患者さんの半数以上は知能指数が50以下とされています。
本症候群ではけいれん重積に対する対策が非常に重要です。自宅で発作がはじまった際に家族が常備の頓服薬を投与して発作を短時間で止めることができれば長時間の発作による脳障害が起こらずに済むので知能の退行を防ぐことができます。
しかし、日本では残念ながら家庭で投与できる有効な頓服薬はありません。ダイアップ坐薬は効果が出るのに時間がかかりますし、エスクレ注腸キットの効果も限られているようです。
海外では速効性に優れたDiastatという注腸薬やBuccolamという口腔粘膜投与製剤があり、家庭でも有効な治療ができるようになっています。
ドラベ症候群患者家族会はこのBuccolamの日本での発売早期承認に向けて17万人分の署名も厚生労働省に提出しており、早期承認が期待されています。
てんかん外来 皆川 公夫
緑ヶ丘療育園 「各部門の紹介」ページを追加、更新しました
緑ヶ丘療育園に「各部門の紹介」のページを追加しました。
各部門の行っている内容や目標がご覧になれます。
下記のURLか、緑ヶ丘療育園のホームページの左メニューからご覧ください。
てんかんミニ知識 第5回(ウエスト医師の名前が冠されたてんかん)を掲載しました。
イギリスの医師ウィリアム・J・ウエストは、自分の息子がいままで報告されていたてんかん発作とは異なる特徴的な発作をおこしたため、1841年に初めて症例報告として発表しましたが、その後20世紀になってようやくこの疾患が注目されるようになり、彼の名が冠せられて「ウエスト症候群」と命名されました。
ウエスト症候群は生後6ヵ月くらいの子どもに発症し、発作は驚いたように一瞬両手を広げて頭を前屈するので、点頭発作、またはイスラム教のお祈りのように両手を上げて頭を前屈するのでサラームけいれん、あるいは寝ていて身体を急に折り曲げるのでジャックナイフ型の発作などと呼ばれています(現在ではこの発作はてんかん性スパスムと名づけられました)。寝て起きたときや眠くなったときなどに一瞬の発作を数秒おきに何回も繰り返す「シリーズ形成性」が特徴です。発作はモロー反射と似ていますが、シリーズを形成する点が鑑別のポイントです。
この発作が起こってくると、今まで笑っていたのに笑わなくなったり、お座りしていたのにお座りしなくなるような精神運動発達の荒廃がみられてきます。
早期発見が重要ですので、疑わしい時には動画撮影し専門医にみてもらうようにしましょう。脳波をとるとヒプスアリスミアという激烈な異常所見を認めますので診断はすぐつきます。抗てんかん薬治療は有効性が低く、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)治療が有効な場合が多いです。
周産期の脳障害や結節性硬化症などが原因のことが多いのですが、中には予後良好な特発性の場合もあります。ちなみに、私も特発性のウエスト症候群のお子さんたちを治療した経験がありますが、幸いその子たちは完全治癒し、学校でも成績優秀でした。
百聞は一見に如かずということわざがあります。ウエスト症候群の発作があるのに乳児健診の時に母が発作の様子を医師にうまく伝えられなかったため、診断が大幅に遅れてしまい悲惨な経過をたどったケ-スもあります。ぜひ携帯やデジカメでシリーズを形成する発作の様子を撮影して医師にみてもらってください。改めて強調しますが、早期発見、早期治療が必要なてんかんです。
てんかん外来 皆川 公夫
緑ヶ丘療育園 CT装置を更新しました
市民公開講座「正しく知りたい、てんかんという病気」のお知らせ
市民公開講座「正しく知りたい、てんかんという病気」
2015年11月29日(日)13:30より、札幌医科大学にて行われます。
緑ヶ丘療育園 皆川公夫 院長の講演もございます。
参加費無料で、お申し込みは、FAX、メール、ハガキのみとなります。
詳しくは下記のPDFファイルをご確認ください。(当院が事務局ではございません)
脳波室の改修工事が完了しました
緑花ふれあい祭り(秋) のご案内(パンフレット追加)
緑花ふれあい祭り (秋) が行われます。
日時:平成27年9月12日(土)
時間:10:50 ~ 14:30
場所:緑ヶ丘療育園・花園学院
プログラム詳細は下記よりご確認ください。
てんかん外来 臨時休診日のお知らせ
平成27年11月 5日(木) 終日 ~ 11月 6日(金) 終日 会議出張のため
平成27年11月11日(水) 午後 ~ 11月12日(木) 終日 講演出張のため
休診させていただきます。
ご迷惑をお掛け致しますが、ご了承のほどお願い致します。
てんかんミニ知識 第4回(抗てんかん薬による熱中症にご注意を!)を掲載しました。
連日猛暑が続いており、この季節は熱中症に注意が必要です。熱中症は外気温に対して体が放熱できずに体の中に熱がこもって体温が上昇する「うつ熱」によっておこります。ヒトは暑いと汗をかいて体から放熱させてうつ熱にならないように調節していますが、汗が出にくい「発汗障害」があるとうつ熱による熱中症がおこりやすくなります。以前、全く汗をかくことができない「無痛無汗症」という非常にまれな難病の患者さんを担当していましたが、この患者さんはすぐに体温が40℃をこえて重症の熱中症をおこしてしまうので、クールジャケットを着用させるなど外気温に対する厳重な対策が必要でした。
かぜで発熱した場合には体の内部で熱をコントロールするため高熱にも限度があるのですが、熱中症の熱源は外気温など体の外にあるため体内で熱を処理できなくなり、外気温による熱の侵入で体温が40℃をこえても上がり続けるという非常に危険な状態になるのです。
発汗障害は子どもと高齢者に多いのですが、抗てんかん薬の副作用でも発汗障害をきたすことがあります。ゾニサミド(商品名:エクセグラン)とトピラマート(商品名:トピナ)を服用している患者さんは発汗障害による熱中症に注意が必要です。
「乳児重症ミオクロニーてんかん(ドラベ症候群)」では体温が上昇するとけいれんをおこし止まらない状態(けいれん重積)になります。このてんかんではかぜだけではなく、入浴や外気温の上昇などでも体温が上昇してひどいけいれんがおこってしまうので、治療薬としてゾニサミドやトピラマートを服用している場合にはなおさら注意が必要となります。
また、ゾニサミドは老人のてんかんやパーキンソン病の治療(商品名:トレリーフ)に使用されることがありますので、この場合も発汗障害がおこりやすくなります。
熱中症の一般的な予防対策のひとつは「たくさん水を飲む」ことですが、発汗障害がある人は水を飲んでも汗が出にくいので、冷房などで涼しくする、体を水で冷やすなどの方が効果的です。しかし、ゾニサミドとトピラマートには炭酸脱水素酵素阻害作用による利尿作用があるため、脱水をおこしやすいという別の副作用もありますので、これらの薬を服用している人は水分をたくさん飲んで脱水の予防をすることがとても重要です。
ちなみに我が家には肉球でしか汗のかけないワンコがおりますので、この夏はクーラーがフル回転しています。
てんかん外来 皆川 公夫