緑ヶ丘療育園 ー お知らせ
てんかんミニ知識 第9回(抗てんかん薬の血中濃度)を掲載しました。
抗てんかん薬を服用すると体内で吸収、分布、代謝、排泄という過程をたどりますが、このような体内動態は複雑で薬物によってかなり異なります。
抗てんかん薬を飲み始めてから安定した効果がえられるようになる(定常状態といいます)までの日数は薬の半減期(薬の血液中の濃度が半分になる時間)の約5倍といわれています。したがって、半減期の短いバルプロ酸(デパケン)やレベチラセタム(イーケプラ)などは2~3日で安定した効果がえられますが、フェノバルビタール(フェノバール)など半減期が長い薬は安定した効果がえられるまで1週間以上かかります。
また、半減期が長い薬は1日1回ないしは2回など分服回数が少なくてもよいのですが、半減期が短い薬は1日2回ないしは3回など分服回数を多くしなければなりません。
抗てんかん薬は脳に作用しますので、本来薬の効果は脳内濃度に関係します。しかし、診療の場で効果を評価する際には脳内濃度と相関するといわれている血中濃度を目安にします。
従来の抗てんかん薬では有効血中濃度や中毒血中濃度が知られていて、効果や副作用の評価の際に参考としていました。とくにフェニトイン(アレビアチン)は特殊な体内動態のため有効血中濃度域が狭く容易に中毒を起こすため、定期的な血中濃度のモニタリングが必要でした。
一方、2,006年以降に発売された新規抗てんかん薬は血中濃度測定の意義は少ないといわれており、有効血中濃度も確立されていません。
しかし、ラモトリギン(ラミクタール)は他の併用抗てんかん薬との間に相互作用があるため、併用薬剤の種類によってラモトリギンの投与量が異なります。そのため、ラモトリギンの適切な量が投与されているかどうかを判断するためにラモトリギンの血中濃度を測定することが必要な場合があります。
また、患者さんがふだんから怠薬していないかどうかのチェックにも抗てんかん薬の血中濃度測定は役に立ちます。
このように抗てんかん薬の薬物動態に関する知識は合理的なてんかん薬物治療に結びつくことがあり、重要な学問になっています。
てんかん外来 皆川 公夫
てんかん外来 臨時休診日のお知らせ
平成28年 9月16日(金) 終日 学会出席のため
平成28年 10月6日(木) 終日 ~ 10月7日(金) 終日 学会出席のため
休診させていただきます。
ご迷惑をお掛け致しますが、ご了承のほどお願い致します。
新任常勤医赴任のお知らせ
平成28年9月1日より 小林 武志医師 (外科) が常勤医として赴任いたします。
緑ヶ丘療育園 駐車場変更のお知らせ
てんかんミニ知識 第8回(てんかん発作に対する家庭での対応)を掲載しました。
てんかん発作は2~3分以内に止まることが多いのですが、5~10分以上経っても止まらない場合には自然に止まる可能性は少なく、さらに発作が持続する確率が高くなります。発作の持続時間が長いほど発作を止める治療に対する反応が悪くなりますし、発作のなかでもとりわけ全身けいれんが30分以上続くと脳神経細胞が低酸素と虚血により障害されることがあります。
したがって、発作が5分以上続くときにはなるべく早く発作を止めることが必要になります。しかし、救急車を要請したとしても家から医療機関に搬送されて治療が開始されるまでの時間は30分以上かかることが多いと思われます。そのため、家庭に発作止めの薬を常備しておいて発作が5分以上続いた際にはまず発作止めを投与することが重要です。しかし、残念ながら日本では速効性があって家庭ですぐに発作を止めることができる有効な発作止めの薬がありません。
現在使われているのはダイアップ(ジアゼパム)とエスクレ(抱水クロラール)ですが、ダイアップ坐薬は基剤が溶けて中から薬剤が出てくるのに時間がかかるため、投与して15分くらいたたないと効果がでてきませんので、速効性は期待できません。
エスクレには坐薬と注腸キットがあります。坐薬にはゼラチンが含まれており、ゼラチンアレルギーのある人には投与できません。また、ダイアップと同じように坐薬は基剤が溶けるのに時間を要するため、注腸キットの方が速効性です。エスクレは投与されますと、体内でトロクロルエタノールに変化し、投与直後は抱水クロラールによって、その後はトリクロルエタノールによってけいれんを抑えるとされていますが、けいれんを止める効果の検証が未だ不十分のため、有効性の評価が定まっていません。
このように、ダイアップ坐薬とエスクレ注腸キットの効果は限定的ですが、医療機関に到着するまでの間に少しでも発作を軽減させることができる可能性があるため、これらの発作止めを投与することをおすすめします。
海外ではダイアップと同じ成分のジアゼパムの注腸キットを家庭で使用することができ、非常に速効性で有効です。また、日本で最近けいれん重積の静注治療薬として認可されたミダフレッサと同じ成分のミダゾラムの口腔粘膜投与製剤(ブコラム)が欧州では家庭で使用することができ、これも速効性で非常に有効な治療となっています。
日本では、ジアゼパムの注腸キットの商品化は期待できない状況ですが、日本小児神経学会、ドラベ症候群患者家族会、日本てんかん協会などから小児てんかん重積に対する治療薬の口腔内粘膜投与ミダゾラム「Buccolam (ブコラム)®」の早期導入の要望があり、平成28年2月3日に開催された厚生労働省の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において「医療上の必要性が高い」と評価され、次のステップへ進むことになっています。
てんかん外来 皆川 公夫
緑ヶ丘療育園 外来駐車場の変更
緑ヶ丘療育園 「各部門の紹介-療育棟」「委員会体制」ページを追加しました
緑ヶ丘療育園に「各部門の紹介」内の「療育棟」、「委員会体制」のページを追加しました。
緑ヶ丘療育園の療育棟の構成、委員会の体制がご覧になれます。
下記のURLか、緑ヶ丘療育園のホームページの左メニューからご覧ください。
てんかんミニ知識 第7回(てんかんにおける突然死)を掲載しました。
今回は突然死という重いテーマについて述べたいと思います。てんかん患者さんにおける突然死のリスクは一般健常人の24倍にものぼると報告されています。
てんかん患者さんの突然死の原因として、外傷(発作による頭部外傷や交通事故など)、溺水(浴槽内での発作による)、自殺などがよく知られています。 一方、原因不明の突然死があることが古くから知られており、sudden unexpected death in epilepsy(SUDEP)と呼ばれています。SUDEPの発生率はてんかん患者さんの死因の10%を上回るとされています。
SUDEPは「良好な状況にあるてんかん患者さんに起きる、突然の、予期せぬ、外傷や溺水が死因ではない死」と定義されており、てんかん重積による死は除くとされています。
SUDEPの危険因子として、①発作頻度が高い、②強直間代発作がある、③抗てんかん薬の多剤併用、④頻回の薬剤変更、⑤怠薬や急激な服薬中断、⑥夜間監視ができない、⑦罹病期間が長い、⑧若年成人、⑨男性、などが挙げられていますが、議論もあるようです。
SUDEPの原因・病態はいまだ明らかにされていません。肺、心臓、脳に生じる異常のうち、どれがSUDEPの発生に本質的で最も重要な因子かについては結論が出ていません。最近はひとつの系だけの障害では説明がつかない現象であり、不幸にも何らかの理由でこれらが連鎖的に起きることで心肺停止に至るものと考えられています。ビデオ脳波モニタリング中にSUDEPに至った患者さんの報告では、はじまりは発作後早期に生じる自律神経系の遮断であり(それに対応して脳波では全般性脳波抑制がみられます)、引き続いて、一過性の無呼吸、徐脈・一過性の心静止がみられた後に、最終的に無呼吸、心静止、そして心肺停止に至ったとされています。なお、複雑部分発作では発作時に心静止があっても自然に回復することが多いのですが、二次性全般化発作では発作後に心静止となり、そのままSUDEPで死亡する率が高いと報告されています。
今回は難しいお話になってしまいましたが、とくに患者さんが一人暮らしの場合には深刻な問題となりえますので、本人だけでなく家族の方々にも頭の片隅に留めておいていただければと思います。
てんかん外来 皆川 公夫
てんかん外来 臨時休診日のお知らせ
平成28年 5月12日(木) 終日 私用のため
平成28年 5月13日(金) 午後 学会出席のため
平成28年 5月18日(水) 終日 ~ 5月20日(金) 終日 会議出張のため
平成28年 6月 2日(木) 終日 ~ 6月 3日(金) 終日 学会出席のため
休診させていただきます。
ご迷惑をお掛け致しますが、ご了承のほどお願い致します。