緑ヶ丘療育園 ー お知らせ
施設基準承認のお知らせ
平成29年2月1日より、「脳波検査判断料1」の施設基準が承認されましたので、今まで脳波検査時に算定していた脳波検査判断料2(180点)に代わり、脳波検査判断料1(350点)を算定することになりました。
てんかんミニ知識 第11回(てんかん診療におけるカルニチン欠乏)を掲載しました。
カルニチンは、脂肪酸からのエネルギー産生に必須の物質であるため、血中や組織内のカルニチンが欠乏すると、各臓器での脂肪蓄積、低ケトン性低血糖、高アンモニア血症、筋力低下、心筋症など様々な症状が出現し、生命に重大な影響を及ぼすことがあります。カルニチン欠乏に関連して、こどものてんかん治療においては3つのことに注意が必要です。
一つ目は抗てんかん薬のバルプロ酸(デパケン)です。デパケンはこどものてんかんによく使われる大変有効な薬ですが、デパケン投与によりカルニチンが低下することが知られています。しかし、血中カルニチンの測定は保険適用がされていないため、てんかん診療においてはカルニチンを測定することができないという問題点があります。ただし、デパケン投与中の血中アンモニア濃度とカルニチン濃度に負の相関がみられることがわかっていますので、6ヵ月毎の抗てんかん薬副作用チェックの際にデパケン投与中の場合にはアンモニアの検査も行い、アンモニアがきわめて高値の場合にはカルニチンが低下していると判断し、補充のためにカルニチン製剤(エルカルチンFF)を服用させています。
二つ目はピバリン酸(ピボキシル基)を含有している抗生物質です。フロモックス、メイアクト、トミロン、オラペネムなどでは長期服用によりカルニチンが低下することが指摘されています。短期間の投与では問題ないことが多いのですが、中耳炎などで数ヵ月にわたる長期投与によりカルニチンが低下し、重篤な症状を呈した症例が報告されています。とくにデパケン投与中の場合には抗生物質の種類に注意することが重要です。
三番目は重症心身障害があって経管栄養のみで栄養を管理している場合です。経腸栄養剤の中にはカルニチンが入っていないものや大幅に不足しているものもありますので、使用する経腸栄養剤のカルニチン含有量をチェックすることが必要です。とくにデパケン治療中の場合には要注意で、エルカルチンの補充が必要になることがあります。
以前はエルカルチンの処方の際には先天代謝異常症の病名が必要なため苦労した時代がありましたが、現在はカルニチン欠乏症の病名でOKになりました。これにならって、血中カルニチン測定もカルニチン欠乏の病名で一刻も早く保険適用されるようになることを望んでいます。
てんかん外来 皆川 公夫
てんかんミニ知識 第10回(抗てんかん薬と高脂血症)を掲載しました。
健康診断などで、総コレステロールが高い、悪玉コレステロールが高い、中性脂肪が高いと高脂血症を指摘され、薬を飲んだり、食事に気を使っている方がおられると思います。
私のてんかん外来で定期的に血液検査を行っている患者さんたちの中にも総コレステロールや中性脂肪が高い方がいます。ふとっている方もいますが、やせている方もいます。とりあえず食事指導を行いながら経過をみているのですが、比較的最近、テグレトールとアレビアチンによっても高脂血症がおこることがあるという情報をえました。
テグレトールとアレビアチンは肝臓で代謝されますが、その際チトクロムP450という酵素を誘導することが知られています。ところが、このチトクロムP450酵素はコレステロールの合成にも関与しているので、テグレトールやアレビアチンを服用していると、この酵素が誘導されることによりコレステロールの値が高値になると考えられています。アメリカの論文ですが、テグレトールかアレビアチンを服用している患者さんに対してテグレトールやアレビアチンをこの酵素を誘導しないイーケプラやラミクタールに変更したところ、総コレステロール、悪玉コレステロール、中性脂肪の値が有意に低下したと報告しています。
私の外来でテグレトールやアレビアチンを服用している患者さんで高脂血症の方はごく一部しかいませんし、これらの方の原因が必ずしも薬の影響かどうか断定できませんが、このようなこともあるという知識を持って対応していくことは重要と思います。
私は小児科医ですが、子どものときから診ていてすでに成人になっている患者さんたちもたくさん診させていただいていますので、テグレトールやアレビアチンで心血管系および脳血管系疾患のリスクが高くなることがあるという知見は衝撃的でした。
これからも長期間にわたるてんかん治療の場においては、いわゆる生活習慣病のチェックや対応にも真摯に取り組んでいかねばならないと痛感した次第です。
てんかん外来 皆川 公夫
てんかん外来 臨時休診日のお知らせ
平成28年 11月9日(水) 午後 ~ 11月11日(金) 終日 会議出席のため
休診させていただきます。
ご迷惑をお掛け致しますが、ご了承のほどお願い致します。
てんかんミニ知識 第9回(抗てんかん薬の血中濃度)を掲載しました。
抗てんかん薬を服用すると体内で吸収、分布、代謝、排泄という過程をたどりますが、このような体内動態は複雑で薬物によってかなり異なります。
抗てんかん薬を飲み始めてから安定した効果がえられるようになる(定常状態といいます)までの日数は薬の半減期(薬の血液中の濃度が半分になる時間)の約5倍といわれています。したがって、半減期の短いバルプロ酸(デパケン)やレベチラセタム(イーケプラ)などは2~3日で安定した効果がえられますが、フェノバルビタール(フェノバール)など半減期が長い薬は安定した効果がえられるまで1週間以上かかります。
また、半減期が長い薬は1日1回ないしは2回など分服回数が少なくてもよいのですが、半減期が短い薬は1日2回ないしは3回など分服回数を多くしなければなりません。
抗てんかん薬は脳に作用しますので、本来薬の効果は脳内濃度に関係します。しかし、診療の場で効果を評価する際には脳内濃度と相関するといわれている血中濃度を目安にします。
従来の抗てんかん薬では有効血中濃度や中毒血中濃度が知られていて、効果や副作用の評価の際に参考としていました。とくにフェニトイン(アレビアチン)は特殊な体内動態のため有効血中濃度域が狭く容易に中毒を起こすため、定期的な血中濃度のモニタリングが必要でした。
一方、2,006年以降に発売された新規抗てんかん薬は血中濃度測定の意義は少ないといわれており、有効血中濃度も確立されていません。
しかし、ラモトリギン(ラミクタール)は他の併用抗てんかん薬との間に相互作用があるため、併用薬剤の種類によってラモトリギンの投与量が異なります。そのため、ラモトリギンの適切な量が投与されているかどうかを判断するためにラモトリギンの血中濃度を測定することが必要な場合があります。
また、患者さんがふだんから怠薬していないかどうかのチェックにも抗てんかん薬の血中濃度測定は役に立ちます。
このように抗てんかん薬の薬物動態に関する知識は合理的なてんかん薬物治療に結びつくことがあり、重要な学問になっています。
てんかん外来 皆川 公夫
てんかん外来 臨時休診日のお知らせ
平成28年 9月16日(金) 終日 学会出席のため
平成28年 10月6日(木) 終日 ~ 10月7日(金) 終日 学会出席のため
休診させていただきます。
ご迷惑をお掛け致しますが、ご了承のほどお願い致します。
新任常勤医赴任のお知らせ
平成28年9月1日より 小林 武志医師 (外科) が常勤医として赴任いたします。
緑ヶ丘療育園 駐車場変更のお知らせ
てんかんミニ知識 第8回(てんかん発作に対する家庭での対応)を掲載しました。
てんかん発作は2~3分以内に止まることが多いのですが、5~10分以上経っても止まらない場合には自然に止まる可能性は少なく、さらに発作が持続する確率が高くなります。発作の持続時間が長いほど発作を止める治療に対する反応が悪くなりますし、発作のなかでもとりわけ全身けいれんが30分以上続くと脳神経細胞が低酸素と虚血により障害されることがあります。
したがって、発作が5分以上続くときにはなるべく早く発作を止めることが必要になります。しかし、救急車を要請したとしても家から医療機関に搬送されて治療が開始されるまでの時間は30分以上かかることが多いと思われます。そのため、家庭に発作止めの薬を常備しておいて発作が5分以上続いた際にはまず発作止めを投与することが重要です。しかし、残念ながら日本では速効性があって家庭ですぐに発作を止めることができる有効な発作止めの薬がありません。
現在使われているのはダイアップ(ジアゼパム)とエスクレ(抱水クロラール)ですが、ダイアップ坐薬は基剤が溶けて中から薬剤が出てくるのに時間がかかるため、投与して15分くらいたたないと効果がでてきませんので、速効性は期待できません。
エスクレには坐薬と注腸キットがあります。坐薬にはゼラチンが含まれており、ゼラチンアレルギーのある人には投与できません。また、ダイアップと同じように坐薬は基剤が溶けるのに時間を要するため、注腸キットの方が速効性です。エスクレは投与されますと、体内でトロクロルエタノールに変化し、投与直後は抱水クロラールによって、その後はトリクロルエタノールによってけいれんを抑えるとされていますが、けいれんを止める効果の検証が未だ不十分のため、有効性の評価が定まっていません。
このように、ダイアップ坐薬とエスクレ注腸キットの効果は限定的ですが、医療機関に到着するまでの間に少しでも発作を軽減させることができる可能性があるため、これらの発作止めを投与することをおすすめします。
海外ではダイアップと同じ成分のジアゼパムの注腸キットを家庭で使用することができ、非常に速効性で有効です。また、日本で最近けいれん重積の静注治療薬として認可されたミダフレッサと同じ成分のミダゾラムの口腔粘膜投与製剤(ブコラム)が欧州では家庭で使用することができ、これも速効性で非常に有効な治療となっています。
日本では、ジアゼパムの注腸キットの商品化は期待できない状況ですが、日本小児神経学会、ドラベ症候群患者家族会、日本てんかん協会などから小児てんかん重積に対する治療薬の口腔内粘膜投与ミダゾラム「Buccolam (ブコラム)®」の早期導入の要望があり、平成28年2月3日に開催された厚生労働省の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において「医療上の必要性が高い」と評価され、次のステップへ進むことになっています。
てんかん外来 皆川 公夫