社会福祉法人 札幌緑花会

札幌地区 緑ヶ丘療育園

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緑ヶ丘療育園 ー お知らせ

てんかん外来 臨時休診日のお知らせ

2019-04-26

令和元年 5月29日(水) 終日 ~  5月31日(金) 終日

学会出席のため休診させていただきます。
ご迷惑をお掛け致しますが、ご了承のほどよろしくお願い致します。

てんかんミニ知識 第21回 緑ヶ丘療育園におけるカルニチン低下の実態 を掲載しました。

2019-04-26

 2017年2月9日のてんかんミニ知識第11回は「てんかん診療におけるルニチン欠乏」というタイトルでした。その時にはまだ保険診療でカルニチン検査ができませんでしたが、2018年2月1日から待望のカルニチン2分画検査が保険診療としてカルニチン測定対象疾患に対して6か月に1回を限度として行うことができるようになりました。

 当施設はカルニチン低下のリスクを持っているてんかん外来通院中の患者さんや入所中の重症心身障害を有する患者さんを抱えていますので、2018年2月1日からこれらの患者さんに積極的にカルニチン検査を行っています。

 カルニチン検査を開始してまだ1年2か月しか経過しておりませんが、今回はその途中経過をお知らせいたします。

 バルプロ酸(デパケン)はカルニチンを低下させるリスクがある薬剤ですので、当施設のてんかん外来に通院中の患者さんのうちデパケンを服用中の患者さんに対して6か月毎の定期検査項目にカルニチン検査を加えました。カルニチン検査では総カルニチンと遊離カルニチンが測定されます。総カルニチンと遊離カルニチンの差がアシルカルニチンですので検査ではこの3つの値がわかりますが、このうち遊離カルニチン値でカルニチン低下の有無や程度を評価することにしました。結果はカルニチン低下が33.1%の患者さんにみられました。中には重度のカルニチン欠乏の患者さんがいましたが、カルニチン欠乏を疑うような症状がふだんからみられていた患者さんは一人もいませんでした。実際予想だにしなかった頑丈そうな患者さんでもカルニチン低下がみられることがありました。また、従来はデパケン投与中に血中アンモニア値がきわめて高い場合にはカルニチンが低下していると予想しましたが、今回のカルニチン検査の結果ではアンモニア値からカルニチン低下を予測することはできないという結果でした。

 当園に入所している患者さんは、重症心身障害、経管栄養、デパケン服用などカルニチンが低下するリスクを複数持っていることが多いのですが、今回カルニチン欠乏を疑ってカルニチン検査を行った入所患者さんのうち70%と非常に多くの患者さんにカルニチン低下が認められました。とくに経管栄養を行っていてデパケンも服用している患者さんではカルニチン低下は100%に認められ、かつ重度の欠乏がみられました。外来患者さんと同様、重度のカルニチン欠乏があってもふだんとくにカルニチン欠乏を疑う症状はみられませんでした。

 このように、カルニチン低下を認めた外来患者さんも入所患者さんもふだんはカルニチン低下を疑わせる症状がみられませんでしたが、カルニチン欠乏はふだん無症状であっても空腹や飢餓・発熱・感染・嘔吐・激しい運動などエネルギー需要が増大した際に急激に重篤な症状で発症する場合があるとされていますので、無症状であってもカルニチン欠乏を見逃すことなく定期的にカルニチン検査を行い、カルニチン欠乏が認められた場合にはカルニチン補充療法を行うことが重要です。

 カルニチンの補充はレボカルニチン製剤(エルカルチンFF)で行いますが、経管栄養を行っている患者さんではカルニチン含有経腸栄養剤(マーメッドワンなど)や微量ミネラル・カルニチン補給飲料(テゾンなど)を用いたり、これらに少量のエルカルチンを併用したりします。

 補充療法によりカルニチンが正常化してもカルニチン値をモニターしながら補充量を減量するなど調整していくことになります。

 なお、ピボキシル基を含有している抗生物質(フロモックス、メイアクト、トミロン、オラペネムなど)を服用するとカルニチンが低下し、低血糖やショックが起こる危険性があるため、デパケン服用中の患者さんと重症心身障害の患者さんはこれらの抗生物質の服用は避けた方が良いと思います。

 ちなみにカルニチンは赤身の肉に多く含まれており特にラム肉に多いので、ときどきジンギスカンを食べるとよいかもしれません。

てんかん外来  皆川 公夫

緑ヶ丘療育園 看護師募集のお知らせ

2019-03-02

緑ヶ丘療育園では、看護師を募集しています
障がいを持った方々と「笑顔」で過ごせるやりがいのある仕事です!
詳しくは、下記リンクの添付ファイルより御確認下さい

看護師求人情報

院外処方箋FAXコーナー設置のお知らせ

2018-12-01

 当院ではこれまで、ご希望の調剤薬局へ事務担当者より院外処方箋のFAX送信を行っておりましたが、この度、院外処方箋専用FAX機を設置し、平成30年12月3日より、患者様ご自身でご希望の調剤薬局へ処方箋のFAX送信をしていただくこととなります。
 患者様にはお手数をお掛けし、誠に申し訳ございませんが、ご協力をお願いいたします。(料金は無料です)
 FAX機の操作方法など、担当事務より説明いたしますので、お気軽にお声がけください。

てんかんミニ知識 第20回 ペランパネル(フィコンパ)を掲載しました。

2018-11-29

 ペランパネル(フィコンパ)はゾニサミド(エクセグラン)以来、27年ぶりに日本で開発された抗てんかん薬で2016年5月に発売されました。フィコンパは後シナプスにあるAMPA受容体を高選択的かつ非競合的に拮抗し、グルタミン酸による神経の過剰興奮を抑制して抗てんかん作用を発揮するという新しい作用機序の抗てんかん薬です。二次性全般化発作を含む部分発作だけでなく、強直間代発作にも適応を取得しましたが、他の抗てんかん薬との併用療法となっており、対象患者は12歳以上となっています。ファースト・イン・クラスの薬として、既存薬では抑制されないてんかん発作にも効果が期待されています。現在、小児適応と単剤療法の適応の取得、錠剤以外の剤形の開発が準備されています。

 フィコンパは半減期が長く、1日1回就寝前の服用だけでよいので、患者さんにとっては都合のよい薬と思います。また、不眠症の傾向のある患者さんでは夜寝る前にフィコンパを服用するとよく眠れるようになり、睡眠薬が不要になる場合もあるようです。さらには、前頭葉てんかんなど夜間睡眠中に発作がおきやすいタイプのてんかんへの有効性が期待されています。

 フィコンパは前述したように新しい作用機序をもつ大変興味深い抗てんかん薬で、視床下部過誤腫の笑い発作、進行性ミオクローヌスてんかん、脳炎後てんかん、レノックス・ガストー症候群など様々なてんかんへの有効性が報告されています。てんかん診療ガイドライン2018において、フィコンパは部分発作と強直間代発作の第2選択薬として位置付けられていますが、今後どのようなタイプのてんかんに有効性が高いのか、特発性てんかんに対する有効性はどうなのかなどが明確になってくることが期待されます。

 フィコンパは2mgから開始し、1週間以上の間隔をあけて2mgずつ漸増すると添付文書には記載されています。しかし、フィコンパにはレベチラセタム(イーケプラ)と同様、易怒性・攻撃性がみられることがあるため、開始量を0.5mgないし1mgとし、少量ずつゆっくり増量するという投与方法の方が時間はかかりますが、無難な場合があります。

 また、フィコンパをカルバマゼピン(テグレトール)やフェニトイン(アレビアチン)と併用するとフィコンパの血中濃度が低下することが知られています。

 クロナゼパム(リボトリール、ランドセン)やクロバザム(マイスタン)はベンゾジアゼピン受容体に作用する薬ですが、耐性(慣れができて効果が低下すること)ができやすいことが知られています。受容体に作用する薬は耐性ができやすいのであれば、AMPA受容体に作用するフィコンパでも耐性ができやすい可能性が懸念されますが、フィコンパの耐性の有無についてはまだわかっていないようです。また、フィコンパの催奇形性についてのデータがまだ十分でないため、妊娠可能女性への投与の安全性は確認されていません。

 ちなみに、第16回てんかんミニ知識にゾニサミドは抗てんかん薬(エクセグラン)ですが、抗パーキンソン病薬(トレリーフ)としても発売されていると記載しました。同様に、ペランパネルも抗てんかん作用以外にALS(筋萎縮性側索硬化症)への有効性が期待されており、現在孤発性ALSに対する医師主導型第2相臨床治験が行われており、興味深いところです。

てんかん外来  皆川 公夫

災害支援ナース派遣のお知らせ

2018-10-04

北海道看護協会の要請により10月7日から10月10日まで厚真町へ災害支援ナース1名を派遣いたします。

てんかん外来 臨時休診日のお知らせ

2018-09-13

平成30年 9月19日(水) 終日 ~  9月21日(金) 終日
平成30年10月24日(水) 終日 ~ 10月26日(金) 終日
平成30年 11月 7日(水) 終日 ~ 11月 9日(金) 終日
休診させていただきます。
ご迷惑をお掛け致しますが、ご了承のほどお願い致します。

てんかんミニ知識 第19回 ラコサミド(ビムパット)を掲載しました。

2018-08-24

 ラコサミド(ビムパット)は2016年8月に発売された日本で最も新しい抗てんかん薬です。ビムパットの効能・効果は16歳以上のてんかん患者の二次性全般化発作を含む部分発作ですが、単剤投与も可能です。小児の適応はまだ取得されていませんが、年内には取得される予定と聞いています。

 ビムパットは新しい作用機序をもつ抗てんかん薬です。フェニトイン(アレビアチン)、カルバマゼピン(テグレトール)、ラモトリギン(ラミクタール)は作用機序としてナトリウムチャネルの急速な不活性化を促進させますが、ビムパットはナトリウムチャネルの緩徐な不活性化を選択的に促進させることによりニューロンの過剰な興奮を抑制して抗てんかん作用を発揮するとされています。すなわち、ナトリウムチャネルの不活性化の促進が急速なアレビアチン、テグレトール、ラミクタールに対して、ビムパットはナトリウムチャネルの不活性化の促進が緩徐であるということが作用機序の違いとなります。一般的に同じ作用機序の薬剤を重ねて使用することは避けるのですが、ビムパットをアレビアチン、テグレトール、ラミクタールと併用することは上述のように作用機序が異なるため可能です。

 ビムパットの効果に関しては抗てんかん薬の使用歴が7剤以上であっても25.8%の患者に部分発作消失が認められたとの報告があり、既存薬では十分な効果を示さない部分発作の患者に対しても有効性が期待できます。

 ビムパットは主な副作用として浮動性めまいがありますが、眠気や精神症状は少ないといわれています。抗てんかん薬にはレベチラセタム(イーケプラ)、トピラマート(トピナ)、ペランパネル(フィコンパ)、ラミクタールなどをはじめ精神症状をきたすものがあり、自閉症や情緒障害のある患者には使いにくいことがありますが、ビムパットはこのような患者にも使用することが可能です。
 また、テグレトールやラミクタールは薬疹の副作用が問題になりますが、ビムパットは薬疹のリスクが少ないといわれています。しかし、テグレトールやラミクタールで薬疹が出現した既往がある患者にビムパットを使用する場合には薬疹のリスクが高まる可能性があることに注意が必要で、投与する前に予め患者に薬疹が出た際の対応の仕方を指導しておくことが重要です。

 このように、ビムパットは新規作用機序を有すること、良好な有効性と安全性が認められていること、臨床的に重要な薬物相互作用が認められないこと、線形性で用量依存的に血中濃度が上昇するなど良好な薬物動態プロファイルを有すること、てんかん患者での服薬継続率が高いこと、骨代謝や脂質代謝への影響が少ないことなど、多くの利点を有する抗てんかん薬として位置づけられています。
 したがって、多くの国で部分発作にはイーケプラやラミクタールに次いでビムパットが使用されるようになってきています。
 ただし、ビムパットは催奇形性についてのデータが未だ十分ではないため、現時点では妊娠可能女性への投与の安全性は確認されていません。今後催奇形性に関する安全性が確認されれば、ビムパットは妊娠可能女性にも使用可能となります。

てんかん外来  皆川 公夫

てんかんミニ知識 第18回 ラモトリギン(ラミクタール)を掲載しました。

2018-06-11

 ラモトリギン(ラミクタール)は前回のてんかんミニ知識第17回で紹介したレベチラセタム(イーケプラ)と同様、非常によく使われている新規抗てんかん薬です。

 部分発作(二次性全般化発作を含む)をはじめ、全般発作の中の強直間代発作と定型欠神発作には単剤でも使用できますし、難治性てんかんの代表であるレノックス・ガストー症候群の全般発作にも他剤との併用療法として使用できます。

 最近では、部分発作には従来第一選択薬だったカルバマゼピン(テグレトール)に代わって、ラミクタールやイーケプラが第一選択薬として使われるようになってきています。また、思春期の妊娠可能女性の全般発作にも従来第一選択薬だったバルプロ酸(デパケン)に代わってラミクタールやイーケプラの使用が推奨されるようになりました。てんかんミニ知識第13回に記載したように胎児に対するデパケンの催奇形性や認知機能・知能への悪影響を考慮して女性にはデパケンを避ける傾向にあるためです。

 新規抗てんかん薬では血中濃度の測定の意義は少ないとされていますが、ラミクタールでは血中濃度の測定が非常に重要です。ラミクタールは他の抗てんかん薬との間の相互作用によりラミクタールの血中濃度が変化するためです。添付文書に併用抗てんかん薬の種類別にラミクタールの開始量、増量方法、維持量が記載されています。しかし、添付文書に示された維持量にしても効果が出ない場合があり、ラミクタールの血中濃度が低すぎることが原因のことがあります。このような場合にはラミクタールの投与量をさらに増量してラミクタールの血中濃度を適切な濃度に上げることによって効果がえられることがあるので、ラミクタールでは血中濃度の測定が非常に重要になるわけです。

 ラミクタールの大きな問題点として薬疹が出ることがあります。場合によっては中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)、薬剤性過敏症症候群等の全身症状を伴う重篤な皮膚障害があらわれることもあります。とくにラミクタールの増量方法が速すぎると皮膚障害が出やすいのですが、添付文書に従ってゆっくり増量すると薬疹が出る頻度は非常に低くなったといわれています。しかし、ラミクタールを使う際には予め患者さんや保護者に薬疹の可能性を説明し、薬疹が出現した際の適切な対処方法を説明しておくことが重要になります。

 ラミクタールは添付文書に従って少量から時間をかけてゆっくり増量していくため、効果が出るのにかなり時間がかかります。場合によっては3ヵ月くらいかかることもあるので、速効性のイーケプラに比べると大きなデメリットになります。

 また、ラミクタールは「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」という効能・効果があり、てんかん以外にも使用されることがあります。この効果と関連すると思いますが、てんかんの患者さんにラミクタールを投与すると認知面や情緒面に好影響がでることがあります。ただし、自閉症や知的障害などを合併しているてんかん患者さんでは逆に著明な興奮性や気分高揚をきたす場合があり、注意が必要です。

 このように、ラミクタールは薬疹の副作用があること、効果を確認するまで時間がかかること、血中濃度の測定が必要なことなど様々な問題がある薬剤ですが、非常に有効な薬ですので、私はこれらの問題に適切に対応しながら難治な経過を呈している患者さんにもよく使っています。

てんかん外来  皆川 公夫

てんかんミニ知識 第17回 レベチラセタム(イーケプラ)を掲載しました。

2018-03-02

 レベチラセタム(イーケプラ)は新規抗てんかん薬の中では最もよく使われている薬です。

 部分発作(二次性全般化発作を含む)には単剤で使用できますが、強直間代発作には他の抗てんかん薬との併用療法として使用されます。

 4歳以上の小児には1日量20mg/kgから最大60mg/kg、成人では1日1000mgから最大3000mgを投与しますが、少量で効果がえられる場合と最大量で効果がえられる場合があります。錠剤の他に小児用のドライシロップ製剤もありますので、錠剤を飲めない患者さんには便利です。

 イーケプラは吸収速度が速く、半減期も短いので、服薬後1時間くらいで血中濃度が最大になりますし、服用開始3日後には定常状態になるため早期に効果をえることができます。さらに投与量と血中濃度が相関するので、増やした分だけ血中濃度が上がります。このようにイーケプラは薬物動態学的に大変使いやすい薬です。

 イーケプラがてんかんに効く機序(作用機序)は従来の抗てんかん薬とは全く異なる新しい作用機序であるため、従来の薬が効かない場合に試してみる価値があります。

 また、イーケプラは他の薬との間に相互作用を起こさないので、他の抗てんかん薬や高血圧の薬など抗てんかん薬以外の薬とも併用できるというメリットがあります。

 さらに、胎児に対する奇形発生率も非常に少ないので、妊娠可能な思春期の女性にも投与しやすい薬剤です。

 以上のように、イーケプラは非常にメリットの多い抗てんかん薬ですので、最近は従来のカルバマゼピン(テグレトール)に代わって部分発作の第一選択薬として使用されることが多くなっています。ただし、イーケプラの投与によりイライラがおこることがありますので、もともと情緒面に問題がある患者さんには注意が必要です。

 ラモトリギン(ラミクタール)もイーケプラと同様、最近は部分発作の第一選択薬として使用されていますが、ラミクタールには薬疹の副作用のリスクや併用薬剤との相互作用のため投与量を調節しなければならないという問題があります。

 ちなみに、イーケプラには点滴静注用の製剤もあります。イーケプラの静注は速効性でけいれん重積にもよく効くのですが、この静注製剤の適応は一時的にイーケプラを口から服用できない状況にある患者に対しての代替療法のみとなっています。今後イーケプラ点滴静注製剤がけいれん重積にも使用できるよう適応拡大されることが望まれます。

てんかん外来  皆川 公夫