緑ヶ丘療育園
第3回 あなたには絶対音感がありますか?
抗てんかん薬の「カルバマゼピン(商品名:テグレトール、レキシン)」は部分発作の治療薬としてよく使用されていますが、三叉神経痛や躁病にも使われることがあります。
カルバマゼピンを飲み始めたら、「音が半音低く聞こえるようになった」と訴えてきた患者さんが今までに10名近くいました。これらの患者さんたちに共通していたのは、「仕事や趣味で音楽に携わっている」ということと「絶対音感を持っている」ということでした。
カルバマゼピンを飲み始めてすぐ数時間後から違和感を感じたという人もいましたが、だいたい1~2週間以内までに変化を感じているようです。
音楽に携わっている人にとっては、「音」は一般の人とは比べものにならないくらいに大切ですし、絶対音感のある人は、日常生活の中で音が半音ずれると気持ちが悪くなってしまうことが多いようです。
この半音低く聞こえるメカニズムはまだはっきり分かっていませんが、耳の奥の、音を伝達する器官に影響を与えているのではないかなどといった説が考えられています。
この症状はカルバマゼピンをそのままの量で続けても1~2週間で消失することが多いのですが、少し量を減らすとすぐに正常な聞こえ方に戻ります。
もしかしたら、カルバマゼピンを飲み始めるとみなさん一時的に半音低下しているのかもしれません。絶対音感がある人はすぐにその違いに気がつくのでしょうが、絶対音感のない多くの人たちはわからずじまいなのかもしれませんね。
音楽を仕事にされている人や音楽を専門に学ばれている人は、カルバマゼピンという薬の副作用で音の聞こえ方が変わってしまうこともあるのだということを知っておいてください。
ただし、自分に絶対音感があるかどうかを確かめるためにカルバマゼピンを飲んでみるなんてことは決してしないでくださいね。
病気の治療のためにカルバマゼピンを飲んで音が変に聞こえるようになったら、すぐに担当医師に相談してください。そして私は絶対音感がありますのでと自慢してみてください。
てんかん外来 皆川 公夫