社会福祉法人 札幌緑花会

札幌地区 緑ヶ丘療育園

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緑ヶ丘療育園

第20回 ペランパネル(フィコンパ)

2018-11-29

 ペランパネル(フィコンパ)はゾニサミド(エクセグラン)以来、27年ぶりに日本で開発された抗てんかん薬で2016年5月に発売されました。フィコンパは後シナプスにあるAMPA受容体を高選択的かつ非競合的に拮抗し、グルタミン酸による神経の過剰興奮を抑制して抗てんかん作用を発揮するという新しい作用機序の抗てんかん薬です。二次性全般化発作を含む部分発作だけでなく、強直間代発作にも適応を取得しましたが、他の抗てんかん薬との併用療法となっており、対象患者は12歳以上となっています。ファースト・イン・クラスの薬として、既存薬では抑制されないてんかん発作にも効果が期待されています。現在、小児適応と単剤療法の適応の取得、錠剤以外の剤形の開発が準備されています。

 フィコンパは半減期が長く、1日1回就寝前の服用だけでよいので、患者さんにとっては都合のよい薬と思います。また、不眠症の傾向のある患者さんでは夜寝る前にフィコンパを服用するとよく眠れるようになり、睡眠薬が不要になる場合もあるようです。さらには、前頭葉てんかんなど夜間睡眠中に発作がおきやすいタイプのてんかんへの有効性が期待されています。

 フィコンパは前述したように新しい作用機序をもつ大変興味深い抗てんかん薬で、視床下部過誤腫の笑い発作、進行性ミオクローヌスてんかん、脳炎後てんかん、レノックス・ガストー症候群など様々なてんかんへの有効性が報告されています。てんかん診療ガイドライン2018において、フィコンパは部分発作と強直間代発作の第2選択薬として位置付けられていますが、今後どのようなタイプのてんかんに有効性が高いのか、特発性てんかんに対する有効性はどうなのかなどが明確になってくることが期待されます。

 フィコンパは2mgから開始し、1週間以上の間隔をあけて2mgずつ漸増すると添付文書には記載されています。しかし、フィコンパにはレベチラセタム(イーケプラ)と同様、易怒性・攻撃性がみられることがあるため、開始量を0.5mgないし1mgとし、少量ずつゆっくり増量するという投与方法の方が時間はかかりますが、無難な場合があります。

 また、フィコンパをカルバマゼピン(テグレトール)やフェニトイン(アレビアチン)と併用するとフィコンパの血中濃度が低下することが知られています。

 クロナゼパム(リボトリール、ランドセン)やクロバザム(マイスタン)はベンゾジアゼピン受容体に作用する薬ですが、耐性(慣れができて効果が低下すること)ができやすいことが知られています。受容体に作用する薬は耐性ができやすいのであれば、AMPA受容体に作用するフィコンパでも耐性ができやすい可能性が懸念されますが、フィコンパの耐性の有無についてはまだわかっていないようです。また、フィコンパの催奇形性についてのデータがまだ十分でないため、妊娠可能女性への投与の安全性は確認されていません。

 ちなみに、第16回てんかんミニ知識にゾニサミドは抗てんかん薬(エクセグラン)ですが、抗パーキンソン病薬(トレリーフ)としても発売されていると記載しました。同様に、ペランパネルも抗てんかん作用以外にALS(筋萎縮性側索硬化症)への有効性が期待されており、現在孤発性ALSに対する医師主導型第2相臨床治験が行われており、興味深いところです。

てんかん外来  皆川 公夫