社会福祉法人 札幌緑花会

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てんかんミニ知識 第25回 新しい抗てんかん発作薬フェンフルラミン(フィンテプラ)について

2024-04-11

2022年11月に新たな抗てんかん発作薬としてフェンフルラミン塩酸塩(フィンテプラ内用液2.2mg/ml)が「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないドラベ症候群患者におけるてんかん発作における抗てんかん薬との併用療法」を効能又は効果として発売されました。
ドラべ症候群については以前てんかんミニ知識第6回(2016.3.16.)に記載しましたが、強直間代発作や半身けいれん等を繰り返し、①発熱誘発けいれん、②てんかん重積を伴いやすい、③薬物治療に抵抗性、という特徴を持つ乳児期発症の発達性てんかん性脳症です。ドラべ症候群患者の70~80%にSCN1A遺伝子異常が認められており、主な病因と考えられていますが、ドラべ症候群以外のてんかんでもSCN1A遺伝子変異が関与していることが知られているため、診断はあくまで臨床症状に基づいて行う必要があります。
てんかん患者では、様々な生理機能や生理活性に関与している神経伝達物質のセロトニン神経伝達の障害が報告されていて、ドラべ症候群でもセロトニン神経系の異常が関係していると考えられています。また、てんかん患者におけるてんかん、抑うつ、頭痛及び原因不明の突然死(SUDEP)などに対して、セロトニン作動性神経伝達の重要性を示唆する報告もみられます(SUDEPについては2016.4.4.掲載の第7回てんかんミニ知識に記載しています)。
フィンテプラの作用機序は今までの抗てんかん薬の作用機序と違って、脳内の特異的セロトニン受容体に対する刺激作用、ならびにシグマ-1受容体に対する正のモジュレーター作用を介すると考えられています。
ただし、添付文書に警告として心臓弁膜症及び肺動脈性高血圧症を引き起こすおそれがあるので、本剤の投与開始前及び投与期間中は定期的な心エコー検査を実施し、循環器を専門とする医師との連携のもとに使用することと記載されています。
成分のフェンフルラミンはやせ薬としての作用もあるため、本剤の副作用として下痢、体重減少、食欲減退などがあり、さらにセロトニン症候群(腱反射亢進、ミオクローヌス、筋強剛、発熱、頻脈、発汗、振戦、下痢、皮膚の紅潮、不安、焦燥、錯乱、軽躁)に注意が必要です。
また、2024年3月に本剤は「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないレンノックス・ガスト―症候群におけるてんかん発作に対する抗てんかん薬との併用療法」においての効能又は効果が追加されました。
本剤の登場により、ドラベ症候群とレンノックス・ガスト―症候群という難治性のてんかん患者さんには福音となることが期待されます。
最後に、用語についての情報です。今までてんかんの治療薬に対して「抗てんかん薬(AED)」が一般的に使用されていましたが、最近は「抗てんかん発作薬(ASM)」が使われるようになりました。

てんかん外来 皆川 公夫