社会福祉法人 札幌緑花会

札幌地区 緑ヶ丘療育園

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緑ヶ丘療育園

第24回 けいれん重積状態の治療薬ブコラム口腔用液について

2022-10-20

 大変久しぶりになりましたが、第24回てんかんミニ知識を掲載いたします。
 2016年6月22日のてんかんミニ知識第8回「てんかん発作に対する家庭での対応」の中でブコラムについて記載しました。ブコラムはヨーロッパでは以前から発売されており、すでにその優れた効果が証明されているので、日本でもできるだけ早期に使用できるよう要望しておりました。幸いこのたび念願かなってついに待望のミダゾラムの口腔粘膜投与製剤であるブコラム口腔用液が2020年12月に発売されました。日本で従来使用されていたダイアップ坐剤とエスクレ注腸キットに比べてブコラムはけいれん重積に対する効果の確実性が高く、速効性のため、小児のけいれん重積に対する家庭内治療法として非常に有力な武器になると思います。
 ブコラムはあらかじめ薬剤が充填された頬粘膜投与用シリンジで、年齢別に修正在胎52週~1歳未満用のシリンジ(投与量2.5mg/0.5ml)、1歳~5歳未満用シリンジ(投与量5mg/1.0ml)、5歳~10歳未満用シリンジ(投与量7.5mg/1.5ml)、10歳~18歳未満用シリンジ(投与量10mg/2.0ml)の4種類あります。このシリンジの液をけいれん重積時に患者の頬粘膜に注入します。けいれんのため口が閉じていても上下の口唇の間にシリンジを入れシリンジの先端を歯茎と頬の間に入れてブコラムをゆっくり注入します。ブコラムは医療従事者と介護者による投与が可能ですが、介護者に関しては、保護者またはそれに代わる適切な者が本剤を投与する場合はその適用開始に当たり医師の指導や確認が必要とされています。これによりけいれん重積時に家族などによる家庭での投与が可能になりました。さらに、2022年7月にブコラムの学校等(保育所、認定こども園なども含む)での教職員等による投与が4つの条件を満たせば可能となりましたので、今後さらにブコラムによる治療が普及していくことと思います。
 しかしながら、ブコラムの投与対象は18歳未満の小児てんかん患者に限られているという問題があります。てんかんは小児期のみならずあらゆる年代にみられる疾患です。したがって、18歳未満のてんかん患者だけにブコラムの福音がもたらされ、18歳以上のてんかん患者にはブコラムを使用できない、17歳まではブコラムを使用できていた患者が18歳になったら使用できなくなるというのでは困ります。今後ブコラムの成人への適応拡大が望まれるところですが、現時点ではブコラムの譲渡先であるヨーロッパのNeuraxpharm社では成人適応拡大のための治験の予定はないと聞いています。ブコラムの成人への適応拡大について患者・親の会や学会を通じての要望が必要と思っています。

てんかん外来  皆川 公夫