社会福祉法人 札幌緑花会

札幌地区 緑ヶ丘療育園

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緑ヶ丘療育園

第1回 抗ヒスタミン薬でけいれんがおこりやすくなる

2015-01-20

 抗ヒスタミン薬は、じんましん、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、感冒などに用いられますので、皆さんも抗ヒスタミン薬を服用する機会が多いと思います。

 かぜ薬や花粉症の薬を飲んだとき眠くなりませんでしたか? 抗ヒスタミン薬を服用すると、薬は全身を回って、脳の中にも入ってきます。抗ヒスタミン薬が脳内に入ると、眠くなる、けいれん閾値が低下する(けいれんがおこりやすくなる)という変化がおこってきます。そのため、てんかん患者さんが抗ヒスタミン薬を服用すると、普段よりも発作がおこりやすくなる危険性があります。とくに、こどもは大人よりもけいれん閾値が低いことが知られていますので、こどもが抗ヒスタミン薬を飲むと、もともと低いけいれん閾値がさらに低くなり、きわめてけいれんがおこりやすい状態になってしまいます。

 したがって、こどもの場合には、てんかんや熱性けいれんの既往がなくても、抗ヒスタミン薬でけいれんがおこる可能性があるため、こどもへの抗ヒスタミン薬の服用は控えた方がよいと思います。私はこどものかぜ薬には抗ヒスタミン薬を入れないようにしていますが、市販の総合感冒薬には抗ヒスタミン薬が含まれていることが多いので、市販の総合感冒薬は使用しない方が安全です。

 代表的な抗ヒスタミン薬として昔から使われていた「ケトチフェン:商品名ザジデン」という薬を例にあげてみます。この薬の添付文書には、てんかんまたはその既往歴のある患者にはけいれん閾値を低下させることがあるので禁忌(投与しないこと)と記載されていますし、使用上の注意にも、てんかんを除くけいれん性疾患、またはこれらの既往歴のある患者にはけいれん閾値を低下させることがあるので慎重に投与することと記載されています。

 しかし、花粉症などでは症状を抑えないと生活に大きな支障が出ることがあります。このような場合には脳に入りにくい(眠くならない、けいれん閾値を低下させない)新しいタイプの抗ヒスタミン薬がありますので、その薬剤を選んで使用するようにします。

 患者さん自身が抗ヒスタミン薬の服用について迷ったときには主治医によく相談してください。

てんかん外来 皆川 公夫