社会福祉法人 札幌緑花会

札幌地区 緑ヶ丘療育園

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緑ヶ丘療育園

第9回 抗てんかん薬の血中濃度

2016-09-01

 抗てんかん薬を服用すると体内で吸収、分布、代謝、排泄という過程をたどりますが、このような体内動態は複雑で薬物によってかなり異なります。

 抗てんかん薬を飲み始めてから安定した効果がえられるようになる(定常状態といいます)までの日数は薬の半減期(薬の血液中の濃度が半分になる時間)の約5倍といわれています。したがって、半減期の短いバルプロ酸(デパケン)やレベチラセタム(イーケプラ)などは2~3日で安定した効果がえられますが、フェノバルビタール(フェノバール)など半減期が長い薬は安定した効果がえられるまで1週間以上かかります。

 また、半減期が長い薬は1日1回ないしは2回など分服回数が少なくてもよいのですが、半減期が短い薬は1日2回ないしは3回など分服回数を多くしなければなりません。

 抗てんかん薬は脳に作用しますので、本来薬の効果は脳内濃度に関係します。しかし、診療の場で効果を評価する際には脳内濃度と相関するといわれている血中濃度を目安にします。

 従来の抗てんかん薬では有効血中濃度や中毒血中濃度が知られていて、効果や副作用の評価の際に参考としていました。とくにフェニトイン(アレビアチン)は特殊な体内動態のため有効血中濃度域が狭く容易に中毒を起こすため、定期的な血中濃度のモニタリングが必要でした。

 一方、2,006年以降に発売された新規抗てんかん薬は血中濃度測定の意義は少ないといわれており、有効血中濃度も確立されていません。

 しかし、ラモトリギン(ラミクタール)は他の併用抗てんかん薬との間に相互作用があるため、併用薬剤の種類によってラモトリギンの投与量が異なります。そのため、ラモトリギンの適切な量が投与されているかどうかを判断するためにラモトリギンの血中濃度を測定することが必要な場合があります。

 また、患者さんがふだんから怠薬していないかどうかのチェックにも抗てんかん薬の血中濃度測定は役に立ちます。

 このように抗てんかん薬の薬物動態に関する知識は合理的なてんかん薬物治療に結びつくことがあり、重要な学問になっています。

 

                           てんかん外来  皆川 公夫