緑ヶ丘療育園
第7回 てんかんにおける突然死
今回は突然死という重いテーマについて述べたいと思います。てんかん患者さんにおける突然死のリスクは一般健常人の24倍にものぼると報告されています。
てんかん患者さんの突然死の原因として、外傷(発作による頭部外傷や交通事故など)、溺水(浴槽内での発作による)、自殺などがよく知られています。 一方、原因不明の突然死があることが古くから知られており、sudden unexpected death in epilepsy(SUDEP)と呼ばれています。SUDEPの発生率はてんかん患者さんの死因の10%を上回るとされています。
SUDEPは「良好な状況にあるてんかん患者さんに起きる、突然の、予期せぬ、外傷や溺水が死因ではない死」と定義されており、てんかん重積による死は除くとされています。
SUDEPの危険因子として、①発作頻度が高い、②強直間代発作がある、③抗てんかん薬の多剤併用、④頻回の薬剤変更、⑤怠薬や急激な服薬中断、⑥夜間監視ができない、⑦罹病期間が長い、⑧若年成人、⑨男性、などが挙げられていますが、議論もあるようです。
SUDEPの原因・病態はいまだ明らかにされていません。肺、心臓、脳に生じる異常のうち、どれがSUDEPの発生に本質的で最も重要な因子かについては結論が出ていません。最近はひとつの系だけの障害では説明がつかない現象であり、不幸にも何らかの理由でこれらが連鎖的に起きることで心肺停止に至るものと考えられています。ビデオ脳波モニタリング中にSUDEPに至った患者さんの報告では、はじまりは発作後早期に生じる自律神経系の遮断であり(それに対応して脳波では全般性脳波抑制がみられます)、引き続いて、一過性の無呼吸、徐脈・一過性の心静止がみられた後に、最終的に無呼吸、心静止、そして心肺停止に至ったとされています。なお、複雑部分発作では発作時に心静止があっても自然に回復することが多いのですが、二次性全般化発作では発作後に心静止となり、そのままSUDEPで死亡する率が高いと報告されています。
今回は難しいお話になってしまいましたが、とくに患者さんが一人暮らしの場合には深刻な問題となりえますので、本人だけでなく家族の方々にも頭の片隅に留めておいていただければと思います。
てんかん外来 皆川 公夫