社会福祉法人 札幌緑花会

札幌地区 緑ヶ丘療育園

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緑ヶ丘療育園ーてんかんミニ知識

第4回 抗てんかん薬による熱中症にご注意を!

2015-08-14

 連日猛暑が続いており、この季節は熱中症に注意が必要です。熱中症は外気温に対して体が放熱できずに体の中に熱がこもって体温が上昇する「うつ熱」によっておこります。ヒトは暑いと汗をかいて体から放熱させてうつ熱にならないように調節していますが、汗が出にくい「発汗障害」があるとうつ熱による熱中症がおこりやすくなります。以前、全く汗をかくことができない「無痛無汗症」という非常にまれな難病の患者さんを担当していましたが、この患者さんはすぐに体温が40℃をこえて重症の熱中症をおこしてしまうので、クールジャケットを着用させるなど外気温に対する厳重な対策が必要でした。
 かぜで発熱した場合には体の内部で熱をコントロールするため高熱にも限度があるのですが、熱中症の熱源は外気温など体の外にあるため体内で熱を処理できなくなり、外気温による熱の侵入で体温が40℃をこえても上がり続けるという非常に危険な状態になるのです。
発汗障害は子どもと高齢者に多いのですが、抗てんかん薬の副作用でも発汗障害をきたすことがあります。ゾニサミド(商品名:エクセグラン)とトピラマート(商品名:トピナ)を服用している患者さんは発汗障害による熱中症に注意が必要です。
 「乳児重症ミオクロニーてんかん(ドラベ症候群)」では体温が上昇するとけいれんをおこし止まらない状態(けいれん重積)になります。このてんかんではかぜだけではなく、入浴や外気温の上昇などでも体温が上昇してひどいけいれんがおこってしまうので、治療薬としてゾニサミドやトピラマートを服用している場合にはなおさら注意が必要となります。
 また、ゾニサミドは老人のてんかんやパーキンソン病の治療(商品名:トレリーフ)に使用されることがありますので、この場合も発汗障害がおこりやすくなります。
 熱中症の一般的な予防対策のひとつは「たくさん水を飲む」ことですが、発汗障害がある人は水を飲んでも汗が出にくいので、冷房などで涼しくする、体を水で冷やすなどの方が効果的です。しかし、ゾニサミドとトピラマートには炭酸脱水素酵素阻害作用による利尿作用があるため、脱水をおこしやすいという別の副作用もありますので、これらの薬を服用している人は水分をたくさん飲んで脱水の予防をすることがとても重要です。
 ちなみに我が家には肉球でしか汗のかけないワンコがおりますので、この夏はクーラーがフル回転しています。

                      てんかん外来 皆川 公夫