社会福祉法人 札幌緑花会

札幌地区 緑ヶ丘療育園

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緑ヶ丘療育園

第18回 ラモトリギン(ラミクタール)

2018-06-11

 ラモトリギン(ラミクタール)は前回のてんかんミニ知識第17回で紹介したレベチラセタム(イーケプラ)と同様、非常によく使われている新規抗てんかん薬です。

 部分発作(二次性全般化発作を含む)をはじめ、全般発作の中の強直間代発作と定型欠神発作には単剤でも使用できますし、難治性てんかんの代表であるレノックス・ガストー症候群の全般発作にも他剤との併用療法として使用できます。

 最近では、部分発作には従来第一選択薬だったカルバマゼピン(テグレトール)に代わって、ラミクタールやイーケプラが第一選択薬として使われるようになってきています。また、思春期の妊娠可能女性の全般発作にも従来第一選択薬だったバルプロ酸(デパケン)に代わってラミクタールやイーケプラの使用が推奨されるようになりました。てんかんミニ知識第13回に記載したように胎児に対するデパケンの催奇形性や認知機能・知能への悪影響を考慮して女性にはデパケンを避ける傾向にあるためです。

 新規抗てんかん薬では血中濃度の測定の意義は少ないとされていますが、ラミクタールでは血中濃度の測定が非常に重要です。ラミクタールは他の抗てんかん薬との間の相互作用によりラミクタールの血中濃度が変化するためです。添付文書に併用抗てんかん薬の種類別にラミクタールの開始量、増量方法、維持量が記載されています。しかし、添付文書に示された維持量にしても効果が出ない場合があり、ラミクタールの血中濃度が低すぎることが原因のことがあります。このような場合にはラミクタールの投与量をさらに増量してラミクタールの血中濃度を適切な濃度に上げることによって効果がえられることがあるので、ラミクタールでは血中濃度の測定が非常に重要になるわけです。

 ラミクタールの大きな問題点として薬疹が出ることがあります。場合によっては中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson 症候群)、薬剤性過敏症症候群等の全身症状を伴う重篤な皮膚障害があらわれることもあります。とくにラミクタールの増量方法が速すぎると皮膚障害が出やすいのですが、添付文書に従ってゆっくり増量すると薬疹が出る頻度は非常に低くなったといわれています。しかし、ラミクタールを使う際には予め患者さんや保護者に薬疹の可能性を説明し、薬疹が出現した際の適切な対処方法を説明しておくことが重要になります。

 ラミクタールは添付文書に従って少量から時間をかけてゆっくり増量していくため、効果が出るのにかなり時間がかかります。場合によっては3ヵ月くらいかかることもあるので、速効性のイーケプラに比べると大きなデメリットになります。

 また、ラミクタールは「双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制」という効能・効果があり、てんかん以外にも使用されることがあります。この効果と関連すると思いますが、てんかんの患者さんにラミクタールを投与すると認知面や情緒面に好影響がでることがあります。ただし、自閉症や知的障害などを合併しているてんかん患者さんでは逆に著明な興奮性や気分高揚をきたす場合があり、注意が必要です。

 このように、ラミクタールは薬疹の副作用があること、効果を確認するまで時間がかかること、血中濃度の測定が必要なことなど様々な問題がある薬剤ですが、非常に有効な薬ですので、私はこれらの問題に適切に対応しながら難治な経過を呈している患者さんにもよく使っています。

てんかん外来  皆川 公夫