社会福祉法人 札幌緑花会

札幌地区 緑ヶ丘療育園

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緑ヶ丘療育園

第14回 カルバマゼピン(テグレトール)

2017-08-08

カルバマゼピン(テグレトール)は部分発作の第一選択薬ですので使用頻度の高い抗てんかん薬ですが、発作型の診断を誤って小児欠神てんかんや若年ミオクロニーてんかんなどの発作に使用すると逆に発作が悪化しますので注意が必要です。

テグレトールは服用開始後10日目前後に薬疹が生じることがあります。そのため、担当医はテグレトールを開始する際には予め患者さんに10日目前後に発疹がでてその日のうちにどんどん広がる場合にはテグレトールによる薬疹の可能性が高いのですぐにテグレトールを止めて担当医に連絡するよう指導しておくことが重要です。もし、そのことを知らずにテグレトールを服用し続けると目や唇などの粘膜が真っ赤に腫れて、高熱が出て、皮膚も水ぶくれになったりする重篤なスティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)に至る場合があります。テグレトールの薬疹にはヒト白血球抗原(HLA)が関係しており、漢民族ではHLA-B*1502、日本人ではHLA-A*3101が関連しているといわれています。

テグレトールは肝臓で代謝されますが、その際チトクロムP450という酵素を誘導します。このチトクロムP450酵素はコレステロールの合成にも関与しているので、テグレトールを服用しているとこの酵素が誘導されることによりコレステロールの値が高値になり、心血管系および脳血管系疾患のリスクが高くなることがあります。また、同様に骨代謝にも影響し、骨粗鬆症が起こりやすくなることもあります。ちなみに、グレープフルーツ(ジュース)はチトクロムP450を阻害するためテグレトールの血中濃度が高くなってしまうので、テグレトールを服用している人はグレープフルーツ(ジュース)を避けるほうがよいと思います。

テグレトールを飲み始めたら音が半音低く聞こえるようになったと訴える患者さんがいますが、絶対音感を持っている人が感じるようです。このメカニズムははっきり分かっていませんが、症状は1~2週間で消失することが多く、場合によっては少し量を減らすとすぐに正常な聞こえ方に戻ります。

他には、テグレトールにより抗利尿ホルモンの分泌異常(SIADH)が生じて低ナトリウム血症をきたすことがありますので、これにも注意が必要です。

テグレトールはナトリウムチャネルの急速な不活性化という作用機序により抗てんかん作用を発揮します。なお、1年前に発売された部分発作用のラコサミド(ビムパット)は他剤との相互作用がないので使いやすい薬ですが、ナトリウムチャネルの急速ではなく緩徐な不活性化というテグレトールとは少し違う作用機序のため、テグレトールとビムパットの併用は可能といわれています。

てんかん外来  皆川 公夫