社会福祉法人 札幌緑花会

札幌地区 緑ヶ丘療育園

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緑ヶ丘療育園

第10回 抗てんかん薬と高脂血症 

2016-12-02

 健康診断などで、総コレステロールが高い、悪玉コレステロールが高い、中性脂肪が高いと高脂血症を指摘され、薬を飲んだり、食事に気を使っている方がおられると思います。

 私のてんかん外来で定期的に血液検査を行っている患者さんたちの中にも総コレステロールや中性脂肪が高い方がいます。ふとっている方もいますが、やせている方もいます。とりあえず食事指導を行いながら経過をみているのですが、比較的最近、テグレトールとアレビアチンによっても高脂血症がおこることがあるという情報をえました。

 テグレトールとアレビアチンは肝臓で代謝されますが、その際チトクロムP450という酵素を誘導することが知られています。ところが、このチトクロムP450酵素はコレステロールの合成にも関与しているので、テグレトールやアレビアチンを服用していると、この酵素が誘導されることによりコレステロールの値が高値になると考えられています。アメリカの論文ですが、テグレトールかアレビアチンを服用している患者さんに対してテグレトールやアレビアチンをこの酵素を誘導しないイーケプラやラミクタールに変更したところ、総コレステロール、悪玉コレステロール、中性脂肪の値が有意に低下したと報告しています。

 私の外来でテグレトールやアレビアチンを服用している患者さんで高脂血症の方はごく一部しかいませんし、これらの方の原因が必ずしも薬の影響かどうか断定できませんが、このようなこともあるという知識を持って対応していくことは重要と思います。

 私は小児科医ですが、子どものときから診ていてすでに成人になっている患者さんたちもたくさん診させていただいていますので、テグレトールやアレビアチンで心血管系および脳血管系疾患のリスクが高くなることがあるという知見は衝撃的でした。

 これからも長期間にわたるてんかん治療の場においては、いわゆる生活習慣病のチェックや対応にも真摯に取り組んでいかねばならないと痛感した次第です。

 

                           てんかん外来  皆川 公夫